2014年10月23日
4. 入山 〜屋久島一人旅 2014〜
「縦走ですか?」と、声を掛けられた。

僕は寝起きでぼーっとしながらバスを降りてザックを背負い直しているところだったので、正直空耳かと思ったぐらいだ。声の聞こえた方へ振り返ると同じバスに乗っていたあの大人しそうな赤いザックの青年が立っていた。
先程見た時とは別人の様な人懐っこい笑顔に僕は眠気も吹き飛ぶくらいにビックリとさせられた。
「白谷雲水峡まで縦走の予定です。今日は淀川小屋まで。もしかして同じルートですか?」と逆に尋ねると、彼は「同じコースですね。途中、僕が滑落してたら助けて下さいね。あはは。」と笑顔でブラックジョークを残し、登山口とは反対方向の紀元杉へと歩いて行った。

紀元杉まではバス停から約100m。
樹齢3000年とも言われるこの杉は周囲の他の杉とは貫禄が違う。
本格的に山へ登る前からこんな杉を惜しみ無く見せてくれるなんて、屋久島恐るべしである。

どーん!!
この立派な杉、登山口とは正反対の方向にあるので、登山者はバスを降り、来た道を戻るように100m歩いて紀元杉へ向かい、紀元杉を観賞した後、またバス停方向へと歩き、そのまま登山口へと向かう事になる。いっその事、この紀元杉前をバス停にすれば往復200mも無駄に歩く事も無くなるんじゃないかと思ったりもするが、登山前の軽いウォーミングアップの為なのだと良い方へ考える。
今来た道を戻り、バス停方面へと向かう。
バス停を過ぎた辺りで先程のバスの運転手さんが下り線の時間待ちをしていた。
軽く会釈をすると「台風が近づいてるから無理は禁物ですよ」と優しく気遣ってくれた。

舗装路を歩き淀川登山口へ向かう。

少し先に赤いザックの青年の姿が見え隠れしている。同じくらいのペースなのだろう。

途中、沢を流れる水の音に癒されながら景色を眺め、歩みを止める。
深緑色の絨毯の様な苔が岩や斜面を美しく覆っている。

気が付けば淀川登山口へと到着。バス停からゆっくり歩いて30分程度かかった事になる。予定通りだ。周辺には自動車が何台か停められている。きっと日帰り登山者のものだろう。先に到着していた赤いザックの青年は手足を大きく伸ばし、準備運動をしてこれからの山道に備えている様に見えた。

登山口正面にトイレがあるので、山道へ入る前に済ませておく。その後、赤いザックの青年と少々雑談。
彼は福岡から来たらしく、屋久島縦走は二度目で単独縦走は初めてとの事。前回は無事に目的地へと辿り着く事ばかり考えてしまい、写真を撮るのを忘れてしまったので、今回は1人でゆっくりと歩きながら写真を撮り、景色を眺めたいとの事だった。
僕はその話を聞く寸前まで「良かったら一緒に歩きませんか?」と言う気満々だったのだが、残念ながら誘うのをやめた。
僕と一緒に歩く事で彼のペースを乱すのは悪い気がしたからだ。
お互い、一人で屋久島へ縦走する為に来ている。暗黙の了解と言うべきか、微妙な距離感を保たなければならない気がした。


登山口には登山道をイメージし易い様にイラストマップが貼られていた。
目的地の九州最高峰の宮之浦岳はもちろんの事、黒味岳、そして永田岳へも時間があれば登りたいと思っていた。

「それではお先に!」と赤いザックの青年は木製の階段を登り、あっという間に見えなくなっていった。
僕は5分程休憩して水分補給と行動食(ナルゲンボトルに入れた柿ピーと麦チョコ)を頬張り、意を決して山へ入る事にした。

ガイド本等で見た「ピンクのリボン」。正しいコースだと示す目印の様なもの。
これを頼りに進んでいく。整備されているのでとても歩きやすい。

「あと◯◯㎞」という標識を見ると、正しく目的地へと進んでいるんだな、と安心する。

幾つかの杉が合体したかの様な大きな杉。今にも歩き出しそうな感じ。

倒れて中が空洞になっている杉。
雨宿りできそう。

この日まで苔が綺麗だなんて思った事が無かった。水滴を含んでキラキラと輝いている。

突然現れた樹皮がツルツルの木。(ヒメシャラ?)森の緑の中で艶のある樹皮が目を引く。妖艶な感じが漂う。

木製のデッキが続く。これ作ってくれた人ってホント偉いと思う。感謝です。

少しペースが速いのか、汗が出てきたのでしばし休憩。周りの風景を眺めながら行動食を頬張る。

この看板から先が世界自然遺産との事。
見た目には違い全く分からないが、世界自然遺産地域の境目を通過する。

淀川小屋まであと少し。

手持ちの水の量が少ない。。喉が渇いてきた。。歩く、ひたすら歩く。

やっと到着!本日の宿、淀川小屋。

さっそく水場を探して水を補給。初めて飲む沢の水は冷えていて美味しかった。

すでにテントサイトはほぼ埋まっている。
高校生の集団がテントをど真ん中に張っていて、周囲にガイラインを張り巡らせてるので全然スペースが無い。。
しょうがなく、奥の方へテントを張ってみる。(白の三角テントが僕のクフ・タイベック)
枯れ枝や木の幹、根が多くて設営しては少し移動を繰り返し、テントの設営に1時間ぐらいかかった。。

落ち着いたところで、小屋の周囲を散策。

陽が傾いてきている。森の中は暗くなるのが早いのかもしれない。

急いで戻って夕食。そして楽しみにしていた焼酎「三岳(みたけ)」をちびちびと。すぐに日が暮れてそれぞれのテントから溢れる暖かな灯りと笑い声が薄暗い森の闇の中へ溶けて消えていった。

焼酎を呑んだせいか、トイレが近い。
場所によってはトイレが無い場所もあるので、利尿作用のあるお酒やコーヒーは控え目にした方が良いと分かった。

寝る前に地図を確認して、明日のコースタイムをイメージする。明日の朝は6時前には出発予定。周りのテントの高校生達が騒いでいたにも関わらず、疲れた身体を休める為、20時頃には就寝。
明日も晴れますように、と祈りながら…
〜 続く 〜






僕は寝起きでぼーっとしながらバスを降りてザックを背負い直しているところだったので、正直空耳かと思ったぐらいだ。声の聞こえた方へ振り返ると同じバスに乗っていたあの大人しそうな赤いザックの青年が立っていた。
先程見た時とは別人の様な人懐っこい笑顔に僕は眠気も吹き飛ぶくらいにビックリとさせられた。
「白谷雲水峡まで縦走の予定です。今日は淀川小屋まで。もしかして同じルートですか?」と逆に尋ねると、彼は「同じコースですね。途中、僕が滑落してたら助けて下さいね。あはは。」と笑顔でブラックジョークを残し、登山口とは反対方向の紀元杉へと歩いて行った。

紀元杉まではバス停から約100m。
樹齢3000年とも言われるこの杉は周囲の他の杉とは貫禄が違う。
本格的に山へ登る前からこんな杉を惜しみ無く見せてくれるなんて、屋久島恐るべしである。

どーん!!
この立派な杉、登山口とは正反対の方向にあるので、登山者はバスを降り、来た道を戻るように100m歩いて紀元杉へ向かい、紀元杉を観賞した後、またバス停方向へと歩き、そのまま登山口へと向かう事になる。いっその事、この紀元杉前をバス停にすれば往復200mも無駄に歩く事も無くなるんじゃないかと思ったりもするが、登山前の軽いウォーミングアップの為なのだと良い方へ考える。
今来た道を戻り、バス停方面へと向かう。
バス停を過ぎた辺りで先程のバスの運転手さんが下り線の時間待ちをしていた。
軽く会釈をすると「台風が近づいてるから無理は禁物ですよ」と優しく気遣ってくれた。

舗装路を歩き淀川登山口へ向かう。

少し先に赤いザックの青年の姿が見え隠れしている。同じくらいのペースなのだろう。

途中、沢を流れる水の音に癒されながら景色を眺め、歩みを止める。
深緑色の絨毯の様な苔が岩や斜面を美しく覆っている。

気が付けば淀川登山口へと到着。バス停からゆっくり歩いて30分程度かかった事になる。予定通りだ。周辺には自動車が何台か停められている。きっと日帰り登山者のものだろう。先に到着していた赤いザックの青年は手足を大きく伸ばし、準備運動をしてこれからの山道に備えている様に見えた。

登山口正面にトイレがあるので、山道へ入る前に済ませておく。その後、赤いザックの青年と少々雑談。
彼は福岡から来たらしく、屋久島縦走は二度目で単独縦走は初めてとの事。前回は無事に目的地へと辿り着く事ばかり考えてしまい、写真を撮るのを忘れてしまったので、今回は1人でゆっくりと歩きながら写真を撮り、景色を眺めたいとの事だった。
僕はその話を聞く寸前まで「良かったら一緒に歩きませんか?」と言う気満々だったのだが、残念ながら誘うのをやめた。
僕と一緒に歩く事で彼のペースを乱すのは悪い気がしたからだ。
お互い、一人で屋久島へ縦走する為に来ている。暗黙の了解と言うべきか、微妙な距離感を保たなければならない気がした。


登山口には登山道をイメージし易い様にイラストマップが貼られていた。
目的地の九州最高峰の宮之浦岳はもちろんの事、黒味岳、そして永田岳へも時間があれば登りたいと思っていた。

「それではお先に!」と赤いザックの青年は木製の階段を登り、あっという間に見えなくなっていった。
僕は5分程休憩して水分補給と行動食(ナルゲンボトルに入れた柿ピーと麦チョコ)を頬張り、意を決して山へ入る事にした。

ガイド本等で見た「ピンクのリボン」。正しいコースだと示す目印の様なもの。
これを頼りに進んでいく。整備されているのでとても歩きやすい。

「あと◯◯㎞」という標識を見ると、正しく目的地へと進んでいるんだな、と安心する。

幾つかの杉が合体したかの様な大きな杉。今にも歩き出しそうな感じ。

倒れて中が空洞になっている杉。
雨宿りできそう。

この日まで苔が綺麗だなんて思った事が無かった。水滴を含んでキラキラと輝いている。

突然現れた樹皮がツルツルの木。(ヒメシャラ?)森の緑の中で艶のある樹皮が目を引く。妖艶な感じが漂う。

木製のデッキが続く。これ作ってくれた人ってホント偉いと思う。感謝です。

少しペースが速いのか、汗が出てきたのでしばし休憩。周りの風景を眺めながら行動食を頬張る。

この看板から先が世界自然遺産との事。
見た目には違い全く分からないが、世界自然遺産地域の境目を通過する。

淀川小屋まであと少し。

手持ちの水の量が少ない。。喉が渇いてきた。。歩く、ひたすら歩く。
やっと到着!本日の宿、淀川小屋。

さっそく水場を探して水を補給。初めて飲む沢の水は冷えていて美味しかった。

すでにテントサイトはほぼ埋まっている。
高校生の集団がテントをど真ん中に張っていて、周囲にガイラインを張り巡らせてるので全然スペースが無い。。
しょうがなく、奥の方へテントを張ってみる。(白の三角テントが僕のクフ・タイベック)
枯れ枝や木の幹、根が多くて設営しては少し移動を繰り返し、テントの設営に1時間ぐらいかかった。。

落ち着いたところで、小屋の周囲を散策。

陽が傾いてきている。森の中は暗くなるのが早いのかもしれない。
急いで戻って夕食。そして楽しみにしていた焼酎「三岳(みたけ)」をちびちびと。すぐに日が暮れてそれぞれのテントから溢れる暖かな灯りと笑い声が薄暗い森の闇の中へ溶けて消えていった。
焼酎を呑んだせいか、トイレが近い。
場所によってはトイレが無い場所もあるので、利尿作用のあるお酒やコーヒーは控え目にした方が良いと分かった。

寝る前に地図を確認して、明日のコースタイムをイメージする。明日の朝は6時前には出発予定。周りのテントの高校生達が騒いでいたにも関わらず、疲れた身体を休める為、20時頃には就寝。
明日も晴れますように、と祈りながら…
〜 続く 〜





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