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2014年10月27日

5. 山姫伝説 〜屋久島一人旅 2014〜

10月3日、宮之浦岳へ。

屋久島に昔から伝わる民話に「山姫」と言う話があるらしい。

屋久島の森の奥深くにいる美しい女性のお話。

綺麗な長い髪と美しい容姿から木の精霊とも呼ばれ、年に数回決まった時期に山へと降り立つ。この女性の事を人々は「山姫」と呼んでいる。山姫は裸で現れたり、十二単を着ていたりと様々で、山で出会った時に笑いかけられて、笑い返すと命を奪われ山を降りれなくなる、という怖〜いお話。

実際に山奥で綺麗な女性に笑いかけられたとして、普通の男性なら笑い返すだろ!(きっと)

なんて事を僕は温かなシュラフに包まれて夢見心地で考えていた。

ここへ来る前に屋久島の事を色々調べていた時に偶然知ったこの話を、まさにこの山奥でふと思い出したのだ。

屋久島での初めてのテント泊は気が高ぶっていたせいか、1〜2時間おきに目が覚めて熟睡出来なかった。早朝4時頃には周囲の誰かの朝食を作り始める音や出発の準備をする音でますます目が冴えてきた。

枕元に置いた腕時計の温度表示を見ると20.2℃。

ゴソゴソとテントから這い出してみると、辺りはまだ真っ暗。空を見上げると満天の無数の星が僕に向かって落ちて来るかの様に瞬いていた。僕の手持ちのカメラではその様子を写真に収められないのがすごく残念。。次回の課題としよう。

テントへ戻り、朝食の準備。
今回、縦走中の食事は重量の制限から「アルファ米」と「インスタント味噌汁」と決めていた。同じメニューが続くと飽きが来てダメだと言う人がいるが、僕は結構大丈夫な方だと思う。1週間3食カレーライスでも全然平気。

アルファ米に熱湯を入れて15分待つ。そして5分で完食ペロリ。

僕の場合は味わうも何も、お腹が満たされればそれで良いのかもしれない(笑)
昼食は宮之浦岳の頂上付近で食べたいと考えているので、その時はゆっくりと景色を眺めながら食事を味わいたい。

そうこうしているうちに周りのテント族は撤収完了、続々と暗い山道へと消えていく。まるで山が大きく口を開け、そこから立ち込める薄暗い霧の中へと次々に人々が飲み込まれていく様な不思議な錯覚を覚える。

気が付けば5時。
僕も食事を終えるとテントを畳み、ザックの整理をして水場でナルゲンボトルに水を補給。そして5時30分、ヘッドライトの明かりだけを頼りに淀川小屋を後にする。

空は暗く、いつの間にか星も見えなくなっている。ヘッドライトの明かりがこんなにも心細いとは思いもしなかった。

昼間の半分くらいのペースでゆっくりと目印のリボンを探しながら前へ進む。樹木の根に足をとられそうになり、暗がりから目の前に枝が現れてよろめいたりと闇の森の危険性を再認識させられた。



ゆっくりと東の空が青白く色を変え、真黒な風景から森の木々や岩達の輪郭が1つずつハッキリと切り取られていくように姿を現した。それから数分も経たないうちにのっぺりと平坦だった風景は次第に奥行きを持ち、深緑や茶褐色や薄灰色に鮮やかに色付けられていった。

周囲が明るくなり、無意識のうちに歩くペースが早くなる。息が切れ始め、鼓動が激しくなる。無理は禁物、と立ち止まる。前後に人影も無く、しんと静まり返って静寂に包まれた。


樹木の根が荒々しく露出し、登山者の行く手を邪魔するかの様にも見える。
これ以上進んではいけない、と伝えようとしているのかもしれない。


目の前が急に開けたと思ったら遠くの山頂に奇妙な形をした巨大な岩の塊が見えた。高盤岳のトーフ岩と言われるものらしい。もっと間近で見てみたい…が、あの奇石へと続くルートが見つからない…。
次回こそは!

静寂を引き裂くかの様に、突然背後でうめく様な鳴き声がした。


ヤクシカだ!
想像していたよりも小柄でずんぐりとしている。首を傾げてこちらの様子を伺っている様にも思える。


小屋から2km程歩いたところにある展望台。絶景を眺めながらひと休み。

非日常的な風景を前に、言葉に表しようのない想いが溢れてくる。
感動。


起伏の少ない道を進むと…


小花之江河へ到着。この辺りは日本最南の高層湿原らしい。


確かこの辺りに美味しい水場があると聞いたんだが、、見当たらない。。
少し前方で赤いザックの青年がカメラを構えていた。湿原の奥にヤクザルを見かけ、僕もカメラを向けるが動きの素早さに間に合わず。


黒味岳分岐で、ザックをデポ。重いザックからの開放感からか、身体がすごく軽く感じる。

ストックと水、そしてカメラだけを持って、赤いザックの青年と黒味岳へ向かう。
往復約1時間の道のり。


こ、これはいったい。。(笑)
ロープでよじ登るとは聞いてなかった。確かにザックを置いてきて正解だった。
こんな登りが3か所ぐらいある。


僕のペースが速過ぎたのか、振り返ると赤いザックの青年が遠くに小さく見えた。


巨大な奇石がここにも。石でできたロボットが横たわっている様に見える。


この上が黒味岳の頂上か?
それにしてもこの巨大な岩がなぜここに存在するのか、不思議だ。。


黒味岳登頂!
(※トレランスタイルでごめんなさい。決して山をなめてるワケではございません。笑)


赤いザックの青年も到着&登頂。
後光が射している様でカッコ良過ぎるこの神々しい1枚。

頂上にいた羽虫の集団に襲われそうになり、二人して慌てて来た道を戻る事に。
荷物を置いた分岐まではあっという間だった。喉が渇いて、水をガブ飲み。


分岐から徒歩30分程度の次の水場で水を補給。
ここの水が今回一番美味しかった。ボトルに詰め、シェラカップでガブ飲み。
ほんの僅かに植物の匂いを感じる。


水場を過ぎてすぐのロープ登り。
登りの途中、右手に水の音が聞こえたのでルートを少し外れてみる。
行動食を頬張り、ここの水を飲んでみたりと一休み。

その間に二人組の女性がロープ道を一生懸命登ってあっという間に消えていなくなった。

適度に休めたので幾分スッキリとした。
ここからは少しペースを速めてどんどん進む。


振り返ると赤いザックの青年が小っさくなっちゃった!赤い点にしか見えない。


段々と天候が悪くなってきた。霧がかって遠くの景色が見えない。。


雨も降ってきたので、広い場所を探してレインウェアを着て、ザックにカバーをかける。その間に次々と登山者が現れ、追い越されまくる。


ここが宮之浦岳まで最後の水場。
この水場を逃すと、この先が大変なので注意…


ルートから少しだけ外れたトコにある携帯トイレ用の建物。


左側中央に見えるだろうか?不思議な奇石を発見。すっかり奇石の虜になっている僕がいる。


途中、何度も2人組の女性達を追い越し、追い越され、と繰り返してるうちに目の前に大きな岩が。やっと頂上か!と思いきや…


宮之浦岳では無く、その手前のくりお岳へ到着。この大きな岩に遮られて宮之浦岳が隠れていたのだ。休む事なく目の前の頂へと歩く。そして…


11時5分、宮之浦岳登頂!
ものすごい羽虫の集団に歓迎され、5分も居られずに反対側へと降りる。


頂上のすぐ真下が絶景ポイント。大きな岩の前に腰掛ける。

ここでザックを降ろし永田岳方面を眺めながら昼食タイム。クッカーやバーナーを出すのが面倒だったので、行動食を多めに食べる。お腹が満たされたら気持ちも落ち着いてきた。

雲がゆっくりと流れ、
風の音だけが聞こえる場所。

足音が聞こえ振り向くと、先程の2人組の女性のうち1人が僕に微笑みながら「こんにちは」と近づいてきた。「こんにちは」と僕も笑顔で会釈。

彼女は帽子を取り、サングラスを外す。透き通る様な色白の肌に切れ長の瞳、1つ結びにしていた長い髪が風に左右にユラユラと揺れていた。

すごく綺麗な女性だった。

僕は見惚れて、一瞬我を失ったかの様に彼女を見ていた。

彼女は僕の2m程手前で立ち止まり、岩の方を向きジャケットを脱ぎ始めたのだ。

知り合いでも無い、会った事も無い、、
展開がうまく飲み込めず、顔をそらすと、今朝、夢見心地に考えていた事をふと思い出した。


『山姫?!』


そう!


…いや、そんなはずは無く。


「パンッ、パンッ!!」と大きな音に振り返ると、岩の隙間に両手を合わせ祈る彼女の姿があった。

全く気付かなかったのだが、実は僕が食事をしていたすぐ真後ろの岩の間に祠があったのだ。僕の勘違いも甚だしい(笑)

それをきっかけに僕はしばらくの間彼女と会話をして笑い合った。

屋久島に毎年1度は登山に来ている事、近づいてくる台風の事、永田岳にも素敵な祠があるのよ、と彼女は笑った。

美しい山並みを背景に腰に手を当て、空を見上げる彼女の姿は何か雑誌の広告の様にも見えた。

彼女は日帰り登山との事でここでお別れ。「気を付けてね!」と彼女は来た道を戻って行った。

名前も知らない、初めて会った人とこんなにも笑って話し合えるなんて初めての経験だったかも。こういう出会いも山の魅力なのかもしれない、僕1人で来なければこんな出会いも無かったかもしれないと思った。

一人旅って良いな。

山って面白い。

もしかしたら山姫伝説ってのは、
美しい山の景色や山奥での出来事に魅せられた登山者が「命」では無く、心を奪われて、下山後も山に残してきた想いを語り継いだものなのかもしれない…

流れる雲を眺め、風の音を聞きながら
そんな事を考えていた。


〜 続く 〜


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Posted by - テツ - at 19:46Comments(0)雑記・日記